「ビジネスは価格で生きて、価格で死ぬ。」
米国のマーケティングコンサルタントであるダン・ケネディの言葉だ。
いかに良い商品、良いサービスを作っても、それを提供する価格設定に失敗しては、ビジネスは成功しない、ということだ。
一見、当たり前のことを言っているように見えるかもしれない。しかし、宿泊施設の料金についてみても、”適当な”料金の決め方をしているケースが非常に多い。
だから当社が取引先の宿泊施設様と打合せを行う際に、最も頭を悩ませるのが宿泊料金をどうするか、ということだ。平日料金と休前日料金くらいしか変化をつけていない場合は難しくない。しかし閑散期から繁忙期まで5段階、10段階と変動させている場合は、かなり複雑な検討作業になる。
価格決定には3つの要素がある。自社の視点、顧客の視点、競合の視点だ。自社の視点=その料金でちゃんと利益を残せるか? 顧客の視点=その料金は顧客が持つ値ごろ感に合致しているか? 競合の視点=周辺の競合宿に勝てる料金は? これらを複合的に検討しなくてはならない。
繁忙期と閑散期の差が大きい場合は、通期でしっかり利益を残すための戦略も必要だ。またどの季節、どの曜日を強化するのか。2名客を数多く取り込むか、3名4名の客を優先するのか。ビジネス客と観光客をどの割合で集めるか。すべては料金設定の如何によって、結果が変わってくる。
料金を需要に応じて何段階も変動させる場合、収益を最大化(稼働率×室単価)するために「レベニューマネジメント」と呼ばれる手法を使うます。もともとは欧米の航空会社が運賃を決めるためのものだった。いまや日本の宿泊施設でも導入するところが増えている。需要を予め予測し、何日前にどれくらいの予約が発生するのかを想定する。ネットなら「いつ」「どのプランを」「どのサイトで」「いくらで」販売するのが最適なのかを考える。考えて考えて、考え抜く。それでもどれが正しい答なのか、わからないことも多いのだ。