安全性

11 2月

最近、ある宿泊施設の運営方法を知って、驚きました。その宿は見た目には小規模ホテルなのですが、スタッフは基本的に常駐していません。自動チェックイン機を使って精算を済ませ、カードキーを受け取ったらそのまま客室へ。チェックアウトは回収ボックスにカードキーを返却するだけです。「いらっしゃいませ」もなければ「ありがとうございました」もありません。

夜間も無人です。火災報知器が発報するなどの非常時には、契約先の警備会社が10分以内にかけつけることになっているそうです。旅館業の許可区分は「簡易宿所」。数年前に大幅に要件緩和がされたものです。「ホテル旅館」営業の許可区分と比べて、消防設備や人件費などを大幅に削減できるため、宿泊業界からは不公平であるとの批判が噴出しました。しかし訪日外国人誘致に前のめりの政府は強引に政策を推進しました。

私が新卒でリゾートホテルに入社したときに、ホテルの最も大事な使命は、お客様の快適な滞在でも感動的なおもてなしでもなく、「お客様の生命と財産を守ること」だと教わりました。事実、火災が発生した場合にいち早くお客様を非難させられるか、急病のお客様を救急搬送のスタッフと連携をとって1分でも早く病院に搬送してもらうか、などは最優先の課題として、宿泊施設はいつも念頭に運営をしています。万が一に備えて、24時間体制で十分な人員を配置する。それが私にとっての当たり前でした。ですから、簡易宿所や民泊法の許可を受けた宿泊施設が、お客様の生命と財産をしっかり守れるとは思えませんでした。火災や急病対応などは1分一秒を争います。警備会社が現場についたときには、すでに手遅れでしょう。

一方で、人間が常駐していれば大丈夫かというと必ずしもそうではありません。避難誘導訓練を年2回行っても、いざという時に従業員が迅速に正しく行動を取れるとは限れない。パニックを起こす、ミスを起こすかもしれない。館内見回りで持ち場を離れた時、仮眠中に事案が発生して、初動に遅れが生じるかもしれない。

反対に、人間に依存するのではなく、監視カメラや様々なIT機器を活用し、消防や警察へ自動通報し、自動で宿泊客を避難誘導するなどすれば、人間と同等またはそれ以上のことが可能かもしれません。

自動車の運転も、高齢者がアクセルとブレーキの踏み間違い事故を起こすくらいなら、自動運転車の方が安全かもしれない。あともう少しテクノロジーが進化すれば、安全確保は人間よりも機械の方が万全かもしれない。そうなったとき人間の役割は、機械を使ってどのように安全を確保するかを設計し、機械のミスが起きないように日々監視を行い、故障が起きないように予防管理をすることなのかもしれません。

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