東京五輪で繰り広げられる熱戦。惜しくも金メダルを逃して、銀メダルや銅メダルを手にした選手が、インタビューで涙ながらに悔しい気持ちを表明するシーンを何度も目にしました。メダルの色は違えども、世界で3番以内に入るなんて、本当に素晴らしいことだし、もっと誇っていいことだと思うのですが、どうしても1番になりたかった選手の気持ちもわかる気がします。「あなたのことが2番目に好き」と言われてもうれしくないのと近いかもしれません。
その昔、政府の事業仕分けにおけるスーパーコンピューターを巡る議論の中で、蓮舫議員が「2位じゃダメなんでしょうか?」と発言したことが話題になりました。莫大な予算を投じて1位を取りにいく方針に一石を投じたものですが、1位であることのマーケティング的な価値を理解していないと批判を受けた発言でもありました。
ソフトバンク創設者の孫正義は圧倒的なナンバーワンに執着することで有名です。同じように業界1位であることにこだわる企業経営者は少なくありません。1位と2位の差がいかに大きいかを理解しているからでしょう。日本で2番目に高い山。日本で2番目に高い建物。世界で2番目に高い山。世界で2番目に長い川。答えられる人は多くありません。
宿泊客は1日に2つの宿には泊まれません。だから、1番になれなければ意味がない。2番もビリも同じこと。ならば1番になれるものを探しましょう。中谷彰宏氏の著書「ホテルのとんがりマーケティング」はどんな宿泊施設もお金をかけずに1番になる=「とんがり」を作る方法を提案しています。
「ブランドもののスカーフは3万円する。だから1万円のスカーフをプレゼントすると、手を抜いたと思われる。でも、1万円のTシャツやハンカチなら喜ばれる。」
「主役で勝負できないなら、脇役で勝負しよう。とんかつではなく、刻みキャベツでとんがろう。」
「ホテルのフロントスタッフが最高の笑顔でも当たり前。でも、清掃スタッフが最高の笑顔だと、とんがりになる。」
SNS時代のいま、たとえ小さなことでも、1番は大きな発信力になります。