「生産性」については、過去にも何度か取り上げたテーマですが、デービッド・アトキンソン氏が著書『新生産性立国論』で主張している内容を中心にご紹介します。
日本の生産性は先進国最低レベルで、特にサービス業の生産性が際立って低い。その原因はいくつかあるのですが、中でも「高品質・低価格」という経営手法に問題があると氏は言います。「いいもの、より安く」なら、一見良いことのように思いますが、実はそうではないのです。
高い品質を保つために、労働者は長時間集中力を保ちながら、高い技術を駆使して働くことが求められる。そうやって精魂込めてつくったものを、安い価格でしか売らないのが「高品質・低価格」。価格が安いと労働者の所得も低くなる。日本の宿泊業は「おもてなし」に表現されるように、世界最高水準のサービスをしているのに、先進国最低水準の所得しかもらえていない。
サービス業に携わる従業員や経営者には“お客様に喜んでいただきたい”という思いからか、日本の「おもてなし」には、無償の接遇や商品が多いように感じます。それに対して欧米の「サービス」にはしっかり料金を受け取る文化があります。バッグをひとつ運んだだけでチップが発生する。良いサービスにはチップを多めに払う。そんな部分にも表れていると思います。
安易に値段を下げないことはもちろんですが、もっと付加価値を高める、つまり提供する商品や接遇に対して、しっかりお金をいただく意識改革が必要です。これからの日本人は、お金を稼ぐことにもっとうるさくならなくてはいけない、とアトキンソン氏は言います。
もっとお金を稼ぐにはどうしたらいいのか。キーワードのひとつが「商品カテゴリの多様性」です。これについては後日、テーマに取り上げたいと思います。