当社のお取引先である宿泊施設経営者の元へ、私も時々訪問させていただいております。その際に、最近は何かと事業承継の話題になることが少なくありません。地方の中小規模の宿泊施設が抱える悩みは様々ありますが、一番深刻なテーマ、と言っても過言ではないでしょう。経営者の息子さんが都会の企業などで勤務した後に、地元に戻って宿の経営を引き継いでくれる場合、経営者さんの表情は本当に明るく、生き生きとしています。反対に、お子さんがいなかったり、いても稼業は継がない、継げない事情があるなどの場合は、経営者さんは将来への不安と寂しさを隠しません。
宿泊業は開業時に多大な投資を必要とする装置産業です。借入金も大きく、事業を引き継ぐ側にも相応の覚悟が要ります。親族以外の人が承継するにも、資金面のハードルがかなり高いと言えるでしょう。この辺を解決するひとつの方法として、大手ホテルが取り入れている「所有」「経営」「運営」の分離を地方の宿泊施設においても導入できないでしょうか。
宿泊施設の仕事に興味があり、サービス業に従事することを望んでいる地方の若い人の中には、起業を考えていたり、経営者になることを夢見ている人もいると思います。そんな若者にチャンスを与える仕組みができないでしょうか。建物の所有をしないで、経営や運営に特化するなら、資金面のハードルや事業者のリスクを抑えられます。従来型のM&Aではなく、国や自治体、金融機関などがバックアップするような制度が求められているように思います。