宿泊業の生産性が低いワケ

31 7月

「宿屋の仕事はキツくて、なかなか儲からない。」
これが僕が30年近く宿泊業に携わってきたなかで痛感することのひとつです。生産性が低い原因のひとつは、日本の宿泊施設の圧倒的多数が小規模経営であること。規模の小ささゆえに、投資、集客、運営などあらゆる面において効率が悪いことです。
もうひとつは製造業のような技術革新を取り込むことが難しいことです。製造業なら新しい技術や機械を用いて、今まで1日に10個しか製造できなかったモノを20個、30個作れるようにすることが可能です。しかし労働集約的な側面が強い宿泊業ではこうはいきません。
ハウステンボスの「変なホテル」のように、ビジネスホテルなら今後、自動チェックイン機などを使って、人的サービスを省いて生産性をある程度上げていくことは可能でしょう。しかし、観光地の旅館など「おもてなし」を売りにしている宿はそれをやっていいのか? 僕はやっていいし、あえてやるべきだと思います。
僕自身、宿屋の運営側に20年くらい居た中で、実感としてあるのが、「サービス」とか「おもてなし」とか言われている聖域のようなことの多くに、非常に多くの無駄が存在している、ということです。サービスの提供側と受け手のミスマッチが少なくないのです。だからお客様が求める「本当のおもてなし」だけを研ぎ澄まし、それ以外の部分は省くことで生産性を高めていくことは正しいイノベーションではないかと思うのです。
「うちの宿はネットで予約を取ることなんかしない。電話で直接お客様の声を聞きながら、やり取りをすることが大事なんだ。」少し前なら、こんなふうに話をする宿の経営者さんが少なくありませんでした。
ネット宿泊予約が進んだことで、少なからずこの部分での生産性は上がったと思います。でも、宿の中には非効率が至る所にゴロゴロ転がっています。だからもっとITを使って、「宿屋の仕事をラクで儲かる」ようにできないか?
きっとできるはず。そう信じて、新しい仕組み作りにこれからもチャレンジしたい、そう思っています。