航空機のコックピットには無数の計器が並んでいる。離陸前や飛行中に異常が発生したときに、いち早く対処するための大事な機能だ。宿泊施設の経営にもコックピットの計器が必要だ。
刻々と変動する売上高・現預金残高・人件費・仕入原価などの数字管理は欠かせない。宿の仕入原価の中でも大きな割合を占める食材原価について考えてみたい。
日本の旅館は古来より一泊二食型の利用が基本だった。そのため、(食材原価率)=(原価)÷(一泊二食の宿泊代金)のような計算方法をとってきた。しかし今や、宿泊代金は季節や販売チャンネルなどに応じて上下変動するのが当たり前の時代。そうなると上記の計算方法では管理ができない。そこで、一泊二食の宿泊代金を室料と食事代に分けることになる。
食事代金に対して、いくらの食材原価をかけるかによって、原価率が決まる。運営形態などにより30%~40%のように幅があるが、問題は定めた原価率をいかにキープするかだ。
円安が進めば輸入食材はじめ多くの食料品が値上がりする。生鮮品も天候などの影響を受けて乱高下する。値上がりしたときにはすぐに対策を講じなければならない。
例えば白菜が高騰したら、他の野菜に代替する。エビが高値なら使用量を抑える。サラダ油が高騰したら、他の業者から安く仕入れならないか見直す。それでもダメなら献立自体を変更する。それが出来ないなら、食事代金の変更を検討する。
原価率が1%乖離するだけで、大きな経費増となってしまう。宿の経営者、支配人、料理長、仕入担当者はコックピットで同じ計器を見て、日々行動することが不可欠だ。