先日、札幌の中心部を歩いていたときのことです。繁華街の歩道脇に、除雪でできた雪の山が積み上がっていました。高さは2メートル、幅は3メートルほど。ちょっとした小山です。
その雪山で、外国人の3歳くらいの子どもが2人、夢中になって遊んでいました。親御さんは少し離れた場所から目配りしていて、たぶん買い物の合間の“待ち時間”だったのかもしれません。大人から見れば「ただの雪の塊」でも、子どもにとっては立派な遊び場。雪質も広さも関係ありません。必要なのは想像力と自由だけ。子どもは本当に“遊びの天才”だと感じました。
ホテル・旅館の館内にも、意外と未活用のスペースが残っているのではないでしょうか。ロビーの端、廊下の突き当たり、窓際の余白、使われなくなった小部屋。運営側の目線では、こうした場所は「何も収益を生まない場所」として意識から外れがちです。けれど、お客様の目線では、その余白が滞在の印象を左右する「小さな舞台」になる可能性を秘めています。
大がかりな設備投資は必要ありません。大切なのは、「きっかけ」をそっと置くことです。たとえば、椅子を2脚置いて静かに過ごせる窓辺にする。子どもが手を動かせるように折り紙や塗り絵を用意する。地域に関連する書籍をさりげなく並べる。たったそれだけでも、“待ち時間”が“楽しい時間”に変わるかもしれません。
館内を一度、お客様の歩幅で歩いてみてください。何もしていない場所が見つかったら、そこはまだ磨かれていない「雪山」かもしれません。そこに添える小さな工夫が、お客様の記憶に残る「宿の個性」になっていくはずです。