日本の観光業界が本格的な回復フェーズに入りました。主要な観光地ではインバウンドがほぼコロナ前の水準に戻り、来月5月8日には新型コロナの感染症法上の位置付けがいよいよ5類に移行します。旅行に出かける際の心理的なハードルは一層取り払われるでしょう。
観光需要が増加する一方で、宿泊業界では人手不足の問題がますます深刻になってきました。コロナ禍に見舞われた3年間で多くの人材が流出し、新規採用に苦戦しています。少子化による生産年齢人口の減少に対し、国や地方は抜本的な対策を打ち出せずにいます。では宿泊業界はこの先ずっと人手不足に苦しみ続けなければならないのでしょうか。
悲観的な将来予測が多いなか、私は宿泊業界が人手不足から解放される日が必ず来ると予想しています。救世主となるのはテクノロジーです。例えば、フロント業務は人手を介さずすべてオンライン上で完結し、客室清掃はAIを搭載した高度な作業ロボットが行う。それは10年後とか、それほど遠くない将来に実現するのではないでしょうか。
なぜそんな短期間に実現するのか。その理由は、テクノロジーが個別に進化するのではなく、複数のテクノロジーが「融合」することで進化のスピードが爆発的に加速しているからです。10+10+10+10+10=50 ではなく、10×10×10×10×10=100000 です。OpenAI社が開発したChatGPTに象徴されるAIの威力は想像をはるかに超えるものです。ボストン・ダイナミクス社の人型ロボット、次世代移動通信システムの5G、半導体の製造技術や新素材の開発など、様々なテクノロジーが融合しながら驚異的な速さで進化しています。
では、仮に10年後にそんな未来が実現するとして、それまでどうやって人手不足を乗り切ればいいのでしょうか。それには、労働資源の最適化がテーマになると思います。人手が足りないといっても、実はあるところにはある。意外な場所に余っていたりする。例えば政府が検討している「年収の壁」撤廃もそのひとつ。ほかには「雇用」という概念の見直し、ギグワークや副業の推進、地方労働力の活用、外国人労働者、アウトソーシングなど。オンラインやアプリ、アバターの活用でも、有望な打ち手が開けるかもしれません。