とんかつ屋の悲劇

31 8月

ここ数年、東京都内の人気とんかつ店が次々と廃業している。

「その店は確かに人気が出るはずで、立派なとんかつ定食が600円から800円と格安なんです。本来であれば1000円から1500円ぐらい取らないと儲けが残らないという水準でした。」

それを可能にしているのは、すでに減価償却の終わった古い設備、ローンを払い終えた自社店舗、そして夫婦二人で一人分の給与しかなく、年金をもらいながら切り盛りしている。

こうした経営を続けてきた場合、いよいよ世代交代の時期になると若い現役世代にはとても生活をしていけるだけの収入を得ることができない。 急に値段を大幅に上げるなどはできないし、設備更新などに多額の費用がかかるので、後継者にとっては重荷になる。

団塊の世代が細々と経営を継続してきた事業を、次世代が継承できず、そのまま廃業していくという問題は、とんかつ屋だけに起こっている事象ではない。

(神戸国際大学教授 中村智彦氏)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

全国に4万軒以上ある宿泊施設のうち、大多数は家族経営など小規模で営むものです。いずれも開業から相当の年数が経過して、今後は改修などに高額な設備投資が必要となってくる建物が少なくありません。いつか必ず訪れる事業継承の機会を見据え、今のうちから適正な収益を上げられるビジネスモデルを再構築しておかなければなりません。

そのために、商品の見直し、価格の見直し、販売方法の見直しを定期的に行うことが求められます。経験や勘に頼らず、マーケティングのノウハウを取り入れて行う必要があります。