「十年一昔」という言葉があった。世の中は移り変わりが激しく、10年もたつと、もう昔のこととなってしまう、という意味だった。もはやこの言葉は死語だろう。この時において10年はひと昔どころではなくなったのだ。
さて、取引先(宿泊施設)の経営者と話しをしていて、驚かされることがある。「昔と比べて、お客さんが減ってきてしまってね。」と仰るので、「では単価の方は?」と尋ねると、「うちは宿泊代はずっと変えていないよ」と平然と仰るのである。
これだけ世の中がデフレで、身の回りの価格が総じて下がっているのを自身が体感していないはずはないのである。なのに、自分の宿の値段だけは、下げずに維持しているのである。
宿泊業界全体の概況として、客単価は10年前と比べると、およそ2割は下落しているようだ。単価の下落は利益率の悪化に直結するため、宿泊施設の経営者にとっては、極めて厳しい状況変化だ。しかし、消費者の値頃感から乖離せず、また競合に負けないために、経営者は苦渋の中で料金の引き下げを行っている。もし、それをしなければ、大幅な集客減が待っている。
十年前と料金を変えていないところは、想像するに集客数では3割以上のマイナスになっているのではないか。単価下落の2割を大きく上回る幅だろう。