一通の封筒

27 2月

私は2010年、たった一人でプライムネットを創業しました。事業の基盤もコネもなく、私自身に営業の経験もありません。まさにゼロからのスタートでした。それでも必死で北海道内の宿泊施設を一軒一軒訪ね歩き、最初の2年間で約30軒のご契約をいただきました。

当時のサービス体制は、土日はもちろん年末年始も休まない年中無休。営業時間は夜20時まで。営業からコンサルティング、サポート業務に至るまで、すべてを社長の私が「ワンオペ」で回していました。営業ため車で移動中でも、電話が鳴れば即座に路肩に車を停めてノートPCを開き、問い合わせ対応や在庫調整を行う日々。当時はただ必死なだけで、自分のビジネスが本当にお客様の役に立っているのか、確信を持てない時期でもありました。

そんな中、2012年の春に忘れられない出来事がありました。

ある地方都市に、高齢の姉妹が切り盛りする40室ほどの小さなビジネスホテルがあり、私はそこに営業をかけていました。当時は宿泊施設の予約経路が電話からネットへ変わり始めていた頃。パソコン操作に不慣れな姉妹は、夜遅くまで画面と格闘してもネット予約が思うように入らず、途方に暮れていました。
私はお二人にこうお伝えしました。
「私を信じて、宿泊予約サイトの運用を任せてください。必ず売上を上げてみせます」
そうしてご契約をいただき、当社で運用を開始すると、翌月からネット経由の売上は目に見えて伸び始めました。

その後も定期的にホテルへ足を運び、姉である社長と打ち合わせを重ねました。ある日のこと、打ち合わせを終えて帰ろうとする私のもとへ、普段はあまり顔を出されない妹さんがそっと駆け寄ってきました。そして、一通の封筒を差し出しながら、こうおっしゃったのです。

「眞柄さん、これ。本当に、本当にありがとう」

封筒の中には、一万円札が入っていました。

「実は、経営が苦しくて少し前には廃業も考えていたの。でも、あなたと契約して売上が戻ってきた。姉と相談して、もう少しだけ頑張ってみようって決めたのよ」

驚きで、言葉が出ませんでした。
宿の経営には、単なる数字では測れない「人生」そのものが宿っている。私たちの仕事は、その重みを受け止め、共に背負わせていただくことなのだ——。そう強く気づかされた瞬間でした。

あれから10年以上が経った数年前、姉妹は円満にリタイアされ、ホテルは地元の企業へ無事に引き継がれました。そのホテルは今でも、当社の大切なお取引先の一軒です。

「日本の小さな宿を元気にしたい」
その一心で踏み出した一歩は、創業から16年が経った今、社員30名の企業に成長しました。お取引先も、今では北海道から沖縄まで全国に広がっています。

私たちの仕事の本質は、予約運用の単なる効率化だけではありません。
経営者の皆様の「想い」を支え、現場の苦しみを分かち合い、共に宿の未来を創ること。プライムネットはこれからも、その原点を忘れることなく歩み続けてまいります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)