ある温泉宿の閉館

28 12月

 

この年末に、残念な知らせが入った。

当社の取引先である、道東の小規模温泉宿が今月末で閉館することになったのだ。

経営不振で、銀行から追加融資を断られたらしい。倒産だ。

 

お宿のご主人とは宿泊料金や料理内容のことで、喧々諤々とやったことが何度かある。

このお宿、野趣満点の露天風呂と美味しい料理で一時はなかなかの人気を博していたようだ。

しかし、宿泊料金はかなり昔から、ほとんど変えていなかったらしい。

明らかに相場感からして高いのだ。

そして料理は若い男性でも残してしまうほどの品数とボリューム。

マーケットの実態から、商品や価格が乖離していることに、ご主人は気づいていない。

「シニアや女性を意識して、品数を減らしてみませんか?その分、宿泊料金は低く抑えましょう。」

 

このお宿とは2012年の春に契約をして、インターネット集客のお手伝いをしてきた。

契約当時はインターネット経由の予約がほとんどなかったが、直近では年間2千万円くらいまで

ネット売上を増やすことに成功していた。それでも冬場の稼働率は依然と低迷し、地元の宴会や

団体宿泊客の減少なども響いていたらしい。

 

北海道の観光は長く厳しい冬の時代が続いてきた。

でもやっとここに来て、インバウンドやLCC、そして原油価格下落やデフレ脱却の兆しなど

プラス要因が芽生えてきた。

あともう少し頑張れば、ここを乗り越えれば、明るい風景が見えてくるかもしれない。

そんななか、この宿は年を越せずに、閉館することになってしまった。

ご主人の無念さを想うと、本当にやりきれない。

「日本の宿泊施設を元気にします!」なんて看板を掲げながら、力になれなかった。

自分たちの力不足だ。

 

本当に、残念で、悲しくて、悔しい。