ダイナミックプライシング

11 6月

長期化するコロナ下にあって、多くの宿泊施設はその身を削り、借入金などで「何とか持ちこたえている」といった状況かと思います。しかしバランスシートはかなり悪化しているはず。この先コロナが終息して観光需要が戻り始めても、この一年半のあいだに失ったものを取り返す道は容易ではありません。そのために鍵となる経営戦略のひとつが「ダイナミックプライシング」と呼ばれる価格戦略ではないかと考えます。

ダイナミックプライシングとは、商品やサービスの価格を、需要と供給の変動に合わせて調整することです。インターネットの普及によって実行可能となった販売方法で、航空業界でいち早く導入されました。その後はビジネスホテルでも一般的になり、最近ではレジャー業界やスポーツ業界にも導入の動きが出ています。その一方で、ダイナミックプライシングをいまだに導入できていない宿泊施設が少なくありません。特にレジャー系の施設では宿泊料金のランクを年間で3~4種類しか持たなかったり、ランクは多いが有効にレートコントロールを実行できていない施設も多数あるのが現状です。

ワクチン接種が進んでくるにつれて、宿泊需要は回復局面に入ってきますが、それはなだらかな一次曲線を描くのではなく、不規則な波型の上昇カーブを描くと予想しています。そのため、臨機応変、スピーディに対応可能な価格戦略を持つことで、需要を確実に捉えながら、かつ高単価で販売可能な機会も逃さないようにすることができるのです。需要の下降局面では、低価格な宿泊プランを追加投入するやり方でもある程度は対応可能でしたが、上昇局面ではこの手は使えません。そもそもネット販売においては、宿泊プランでどうにかする時代はとうの昔に終わっているのです。

「同一商品の価格を変動させることは悪である。」もしもいまだにそのようなマインドセットを持っているとすれば、それは時代錯誤どころか、生鮮品の値段が毎日のように変わる需要と供給の原理、資本主義の原則を否定するものだと思います。宿泊業界は何百年も同じビジネスモデルが続いてきた化石のような存在でしたが、それをインターネットが変革しました。そしてコロナ禍が更なるイノベーションの圧力となり、向こう十年くらいで起きる変化がこの一年足らずで起き始めています。宿泊施設はコロナ下でじっと小さく身をかがめてきましたが、いまこそ力強くジャンプする態勢に入る時です。

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