新型コロナの感染拡大は、今の時期はある程度抑えられているようです。しかしこれから冬に向けては第三波、第四波の到来を覚悟しなければなりません。ワクチン開発が進んでいるとの報道もありますが、いずれこの先、観光需要は元の姿には戻りません。戻っても以前の7割程度と覚悟するべきでしょう。
売上3割減でも黒字を出せる宿はまずありません。経費節減で何とかできるレベルでもない。となると、もう根本からビジネスモデルを見直さないとダメです。そんなとき、よくやってしまいがちなのが「足し算」の発想です。ましてやゼロから1を生むのは本当に大変なこと。だから、今ある1を見直すことから始めるべき。そんなとき役に立つのが「引き算」の発想です。
日本が世界に誇るモノづくりの生産現場で基本になっている「業務改善」は、①なくす→②へらす→③かえる の手順通りに進めていくのが大原則です。いきなりやり方を変えることを考えるのではなく、まずはなくすことができないか、やめることができないか、それを検討するところからスタートします。
「今までずっと続けてきたことだから」「お客様がそれを利用しているから」「なくなるときっと困るから」「やめてしまうと、お客様が離れていってしまうから」そんな固定観念をいったん取り払うことから始めましょう。実際に、過去の業務改善の成功事例の多くは、なくすことに起因しています。かつて倒産寸前だったアップル社は、復帰したスティーブ・ジョブズのもと、15種類の製品プラットフォームのうち11種類をやめてしまいました。ボタンやキーボードなど絶対に必要と思われていた機能をどんどんなくしていきました。そしてV字回復を遂げていきます。
フロント業務をなくす。送迎をやめる。電話予約をなくす。手作業をなくす。広告宣伝をやめる。ランチ営業をやめる。通年営業をやめる。食事の提供をやめる。アメニティをなくす。備品をなくす。おもてなしをやめる。
やめる、なくすを真剣に考え抜いたとき、絶対にやめられないもの、やめてはいけないことが明確になります。大事なこと以外全部やめたら、大事なものの姿が研ぎ澄まされ、その価値が利用者により伝わるようになります。