ピラミッド型組織からハイブリッド型組織へ

20 5月

かつて、デジタル通信機器が存在しなかった時代、軍隊における命令伝達は主に口頭に頼っていました。大規模な軍隊では、トップの命令を末端の兵士まで届けるために、いくつもの中継点(ハブ)を経由する必要がありました。逆に、現場から上層部への報告も、同様にハブを通じて伝えられていました。このように、軍隊がピラミッド型の階層構造をとっていたのは、情報伝達手段に大きな制約があったことが一因だと考えられます。

軍隊に限らず、民間企業などの組織もまた、ピラミッド型を基本構造とし、中間管理職が情報伝達のハブとして機能してきました。しかし現在では、メールやチャット、クラウドなどのデジタルツールの普及によって、トップの情報を一斉に共有でき、現場からのフィードバックも瞬時に得られるようになりました。この意味で、従来のような「情報伝達装置としての階層構造」は、もはや不可欠ではなくなっています。

もちろん、中間管理職の役割は情報伝達だけではありません。意思決定、マネジメント、育成といった機能も担っています。とはいえ、これらの機能も含めて、より効果的で柔軟な組織運営の在り方が求められる時代になってきたのは間違いありません。

そのひとつの形が、「フラットなネットワーク型の組織」です。従来、管理職に集中しがちだった役割や権限を一般職にも分散し、上下よりも横の「つながり」を活かして、自由かつ臨機応変に課題解決を図る仕組みです。

ただし、このような組織を成立させるには、いくつかの前提条件があります。第一に、情報公開・情報共有の徹底です。限られた管理職や役員だけが保有する情報を極力なくし、全員が必要な情報にアクセスできる状態を整える必要があります。第二に、個々のメンバーが高いレベルの能力・意識・責任感を持ち、それぞれがリーダーシップを発揮できることです。

これらの条件を満たすのは容易ではありませんが、実現すれば、柔軟かつ健全な組織運営が可能になります。したがって、今後はピラミッド型組織のメリットと、ネットワーク型組織の強みを併せ持つハイブリッド型の組織こそが、時代に適した組織のかたちの一つになるのではないでしょうか。

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