脳科学の研究によると、人間は1日に数千から数万の判断を行っているとされています。比較的単純な判断(例えば、ランチメニューの選択など)の多くは直感に頼っており、これが全体の70~90%を占めています。一方で、ビジネスにおける複雑な決定や重要な意思決定は、全体の10~30%ほどで、こちらは論理的なアプローチが必要とされます。
例えば、クイズ番組で4択の難問に挑戦しているとしましょう。論理的に考え、2つの選択肢が正解でないことはわかっているが、残りの2つのどちらが正解かは分からない。こういった場合、最後には勘に頼らざるを得ないことがあります。
「山勘」や「やまをはる」などの言葉に代表されるように、一般的に勘はあまり良いものと考えられていないようです。しかし、「直感」は単なる勘とは異なるようです。
脳科学者の岩立康男教授によれば、直感とは自分の経験や知識に基づいて働くものです。直感が作用する際、脳は言葉にできない様々な記憶と新たに得られた情報を無意識のうちに結びつけて判断を下します。この過程では脳の広い範囲が活用され、優れた直感には広範な脳の利用が重要です。論理的思考は複雑な問題を単純なモデルに落とし込みますが、現実世界は本来非常に複雑であり、単純化には限界があります。直感的思考はその複雑さをそのまま受け入れ、本質的に理解しようとします。
直感と論理は対立するものではなく、それぞれに長所と短所があります。状況に応じて使い分けることが重要です。
経営者が重要な判断をする際、論理的な方法では答えが出せないこともあります。特に未知の事象や過去に経験がない場合、答えが存在しないことが多いのです。
私自身もかつては論理的思考を重視し、直感に対してネガティブな印象を持っていました。直感は根拠が不明で、他者に説明するのが難しいと感じていたからです。しかし、直感も無意識のうちに思考を重ねて判断を下しているのです。時には論理的思考よりも正しい判断を導くこともあります。これからは直感も大切にしていきたいと考えています。